ハイブリッド車の HV バッテリーは、エンジンほど派手に壊れません。じわじわ、しかし確実に劣化する。その兆候を、数値で捉えたい ─ それが Sandra Soncin の電装セクションのテーマです。
温度という、もっとも正直な指標
HV バッテリーの劣化を語る時、私たちはまず 4 つの温度を測ります。
1. 吸気側入口温度
冷却ファンの吸い込み側 (リヤシート下のことが多い)。
2. 排気側出口温度
バッテリー内を経由して出ていく温度。
3. セル個別温度 (4 〜 12 点)
専用 OBD ツールで採取。一つひとつのセル差が、異常の早期サイン。
4. クーラント入口温度
モデルによっては冷媒ではなくクーラント経路。この差を見るのがポイントです。
システムが見せるドラマ
私たちが診たある Lexus RX 450h (L20) は、吸排気差が 6.2 °C まで開いていました。スクープを開けてみてみると、冷却フィンがエアコンのコン デンサと一体成型された構造で、フィンの隙間に 7 mm 厚の埃が堆積していたのです。
簡単なクリーニングで 4.1 °C まで戻りました。アイドリング時の HV 警告灯も消えています。掃除するだけの仕事で、HV バッテリーの温度環境が 2 °C 下がった。これはかなり大きな数字です。
数字で残しておくと、お客様自身が「これは危なかったんだ」と納得できる。
冷却液の pH も測る
もう一つ、私たちが必ず見ているのが pH です。HV バッテリー冷却経路に使われる専用液は、長期的には弱酸性に傾いていく。これを放置すると、内部の銅配線が腐食を始めます。
- 初期値 : pH 7.5〜8.5
- 要交換ライン : pH 6.8 以下
- 異常 : pH 5.5 以下でクーラント経路の化学反応リスク
Sandra Soncin では、冷却液の入れ替えに合わせ、配線側の電位差 (ガルバニック電位) を計測します。pH と電位を並べて記録することで、「冷却経路がどれだけ健康か」を一枚の写真に収められるようにしました。
まとめ
ハイブリッド車は「エンジンがない」と思うかもしれません。でも実際には、エンジンより静かなドラマが HV バッテリーの内部で進行しています。温度、pH、流量、状態。これを 1 年に 1 回でも定点観測しておくと、あと 5 年、10 年の安心感がまるで違ってきます。
次回は、12V バッテリーあがりが招く、ハイブリッド車の起動不能について書こうと思います。